時は流れた(その３）

　手作り感に溢れた「足柄健太のホームページ」を閉鎖した後は、何だか心にぽっかり穴が開いたような感じで、釣りについてもすっかりやる気をなくしてしまった。
　何人かの友人からは、そんなことを気にしないで続けてくれとか、情報がとても役に立ったのにと悲しむコメントをいただいたりした。
　そもそも釣り人のために良かれと思い始めたHPだったが、世の中には色んな考えの人がいることを痛感させられ、同じ趣味を持つ人たちが仲良くやっていくという当初の思いが果たせないという挫折感を味わった。

　閉鎖当初は、二度とHPなど開設しないと思っていたのだが、時が経つにつれて釣り人との交流ができない寂しさを感じることが増えて来た。
　HPをやっていると、いろいろな情報が集まってくるもので、ネットを通じての交流もとても楽しいものだったのだ。
　そしてついに、全く新たに釣りだけに特化してHPを立ち上げることになる。「足柄健太」のときには、南足柄市周辺の情報や個人的な闘病記録なども載せていたのだが、多くを削って再出発した。
　HPのタイトルは、当地の年寄りの言葉を使って、「やっぱ渓流釣りでしょ」という感じで「なんせったって渓流」にした。
　管理人も、まずはその響きを重視して「クリスタルケイ」のような感じを頭に置いて、同時に「南足柄」をもじって「南足　渓」⇒「Nantal_K」を考えた。
　再開を知らせることもしなかったので、以前のアクセスには全く及ばなかったけど、それでいいと思っていた。
　２００６年の５月に再開して、それから既に１５年も経ったなんて、時の流れは速いものだ。

　世附に足が遠のいてしまったのは、２０１０年の集中豪雨がきっかけだ。
　台風９号の影響で、丹沢湖で一日に５００ミリの雨が降ったのだ。
　当時の情報によれば、湯山商店の脇を流れる沢で土石流が発生、家屋は破壊され３名が負傷したとある。
　川の被害も甚大で、例えば芦沢橋の下の流れは流れ出た砂で橋の高さまで河床が上がってしまった。
　林道も多くの場所で崩れ落ちてしまい、当分釣りは無理だろうと思われた。
　毎週のように集まっていた釣りの仲間は皆世附から遠ざかり、自然消滅的にいなくなっていった。

　あれから１０年以上の時が流れた。あの頃の人達は、今も釣りに通っているのだろうか。
　自分自身が釣りから遠ざかってしまったので、全く情報も入って来ない。
　最近の釣り人のブログなどを見ると、平日でも4時には釣り人が何人か来ているようだ。
　もちろん、当時とはメンバーは変わってしまっただろうが、釣り人が増えているのは何だかとてもうれしい。

　コロナが落ち着いてきたら、当時のメンバーで集まって、昔話に花を咲かせるなんてことができれば、最高なんだけど。
　昨年、入退院を繰り返した自分だからそう思うのかもしれないが、そろそろ今生の別れをしておいた方がいい気もするのだ。
　
（2021/8/22）