増水の恐怖


雨が降ると、釣り師は川が気になってしかたない。
濁りがだんだん少なくなってきて、いわゆる笹濁りになって。
大物の気配。あの、緊張感はたまらない。

雨の降り始めも、釣れる。
しばらくして濁りが入ってくると、今まで全く気配がなかった淵から、魚信が連続することがある。
魚たちは本能で、雨と餌を結び付けているのだろうか。

雨の日は、食（くい）がいいから、ついつい無理をしがち。
世附川本流の悪沢出合いの上流、いつもは楽に渡れる場所がちょっとヤバそう。
でも、ここまで来て引き返す勇気もない。
何とか渡れるだろうと、強引に水に入った。
だが、腰まである強い流れに足がすくわれ、転倒。
ウェーダーなので、足が浮いたらヤバイ。
さらに下流は、もっと速い流れが続く。

幸い何とか立ち上がり、やっとの思いで岸に戻ったが、大切な竿は真ん中で折れていた。
後でよく探すと対岸に踏み後があり、難なく深みを巻けた。
みんな増水時はここを使っていたのだ。

死なないで、よかった。